「私がいつでもはいれるように部屋に鍵をかけないで」という彼女

彼女と同棲するようになったのは、半年くらい前のことです。実はお互いの両親も公認しているため、自然な成り行きでそうなったのです。
一緒に暮らすようになると、お互いの知らなかった部分が見えてくるようになります。だからこそ結婚前に一緒に暮らしてみて、お互いの生活習慣を確認しあい、必要な部分は調整することによって、結婚したあとに「こんなはずじゃなかった」なんてことにならにようにすることは、けっこう重要なことだと思っています。

半年間同棲してみて驚いたのは彼女が普段とまったく変わらないということです。もともと外で飾り立てるようなタイプではないと思っていましたが、家のなかでも家の外でも、礼儀正しさや振る舞いの品の良さがまったく変わらなかったことには、さすがにちょっと驚き、また、嬉しく思いました。
彼女は簡単に言うと育ちが良いので、家事などには不安があると自分で言っていましたが、実際にフタを開けてみると、料理はとても細やかですし、掃除洗濯も要領よくこなします。本で読んだことしか知らないから手探りだと本人は言っていましたが、独り暮らしが長く、そういう意味で家事にはそれなりの自信があった私からみても、とても優秀だと思えるのです。

そんな完璧な彼女かたら、ひとつだけ不可思議な要望がありました。それは「私がいつでも入れるように部屋にカギをかけないでほしい」というものです。もともとカギなんかかけるつもりはありませんでしたが、そういうふうにあらたまって言われると、かえってなんだか不安になるのです。
それ以来、わたしは部屋にひとりでいるとき、奇妙な感覚に襲われます。誰かに見られているような、監視されているような、なんとも不安な感覚なのです。もちろん彼女は居間や台所にいるはずですし、仮に彼女に監視されていても全く嫌ではないはずなのですが、ふとした拍子にドアのほうを振り返ってしまいます。
こんなわたしは変でしょうか?